トランプ政権vs「赤い帝国・中国」
日本にとっての最悪シナリオとは?
最新中米情勢をもとに完全予測《後編》
中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」
少なくとも、中国当局は、トランプ政権という不確定要素の登場を最大限に利用する強い意志と戦略性を持って相当前から準備をしているということだ。
目下の中国習近平政権は明確な野望を持っている。
それは「二つの百年計画」、あるいは「中国の夢」あるいは「偉大なる中華民族の野望」といった言葉で表現されているのだが、その詳しい内容とそれを実現するための戦略は拙著『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ刊)に詳述してあるので、参照していただきたい。
一言でいえば、米国を中心とした現在の世界秩序に中国秩序が取って変わりたいという野望である。民主主義や自由、人権、法治など西側的普遍価値を基礎につくられた世界秩序に対し、中国を中心とする華夷(かい)思想を基礎とした中華秩序を打ち立てるということである。
トランプ現象によって顕在化した旧来の米国的民主主義的価値観の疲弊、世界秩序の疲弊を目の当たりにした中国が、これを好機としてアクションを起こさないわけがない。日本の領土と主権を脅かしかねない赤い帝国の野望に対して、日本が積極的なプレイヤー意識、戦略性を持てるのかどうかが、トランプ政権登場に象徴される不確定時代に向き合うための鍵であることを、再度喚起しておきたい。
※新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』重版出来記念。福島香織、最新書き下ろし記事公開。
著者略歴
福島香織(ふくしま・かおり)
1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。最新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ)が発売即重版、好評発売中。